売主と買主の費用負担―貿易講座213回 - 手賀沼日記

久しぶりの貿易講座です。

貿易業務従事者の一般的考え方として、「輸出地で発生する費用は売主負担、輸入地で発生する費用は買主負担」と言うのがある。この考え方は、多くの取引において当てはまる場合が多いが、必ずしもすべての貿易取引に当てはまるものではない。国際貿易取引規則Incoterms 2010 において、検証してみよう。

1 輸入国法規による強制的船積前検査費用の負担

実際の貿易取引において、紛争の多い問題である。通常買主は、これは輸出国で発生するので、売主負担と主張しがちであるが、これは間違い。Incoterms 2010は、各規則の買主の義務B9において、DDp規則を除き、買主の負担と明記している。

ただし、DDP関税持込渡しの場合は、B9において、買主は支払い義務なしとしており、この規則の場合は売主負担となる。

2 その他

?EXW 工場渡

売主は国内物品供給者にとどまり、輸出手続きを行わない。物品引渡し後の費用は国内で発生しても、買主負担である。

?DAT ターミナル持込渡、DAP 仕向地持込渡 

売主は輸出地国内で発生する費用のみならず、輸入地の物品引渡地点までの費用を負担する。

?DDP 関税込持込渡

この規則はDATやDAP規則をさらに押し進め、売主が輸入通関を行い、費用を負担する。

上述のように、これらの取引の場合、「輸出地で発生する費用は売主負担、輸入地で発生する費用は買主負担」は当てはまらない。詳細については、Incoterms 2010を参照していただきたい。