JOLEDがテレビ向け有機ELパネルを作らない理由

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JOLEDがテレビ向け有機ELパネルを作らない理由

2017年12月05日

芹澤隆徳ITmedia

ソニーパナソニックの技術を継承したJOLEDジェイオーレッドが、世界初のRGB印刷方式による有機ELパネルの量産を開始した。サイズは中型に分類される216インチ。テレビ向けの大型パネル生産も期待されているが、現時点で参入することは考えていないという。

2015年1月にパナソニックソニー有機EL開発部門を統合して設立されたJOLEDは、パナソニックが10年以上開発してきたRGB印刷方式を引き継ぎ、ソニーがこだわっていたトップエミッション構造の有機ELパネルを製造する。12月5日に初めて量産出荷を開始した216インチパネルは4K対応で、ソニーの医療機器部門であるソニーイメージングプロダクツソリューションズのメディカルモニターに採用が決まった。今後は有機ELを採用した製品が極めて少ない中型パネル市場で、車載やゲーム用モニターなど幅広い分野に展開していく考えだ。

小型から大型まで同じ製造技術でカバーできるのがRGB印刷方式の特徴でもある

ただし同社によると、RGB印刷方式によるテレビ向け大型パネルの量産技術も既に確立しているという。前身であるパナソニック時代、酸化物TFTを作り、カットしてから56インチで印刷する手法でテレビ向け有機ELパネルを製造していた2013年、14年のCESで展示したもの。このとき、既に基本的な技術はできていた同社広報チームマネージャーの加藤敦氏という。ただ、当時は印刷装置のほうがG55第55世代、マザーガラスのサイズは13001500mmのため、先にカットする枚葉どりという手法にせざるを得なかった。

現在はマザーガラスと印刷装置がともにG8522002500mmのフルライン生産技術がある。G85は、55インチの6面取りが可能な大きさだ。

印刷方式のコア技術を1社で保有するのが同社の強み

テレビ用の大型有機ELで先行する韓国LGディスプレイは、RGBの有機材料を20層ほど重ねて白色に発光させ、カラーフィルターを用いて色を付けるホワイト蒸着方式を採用している。JOLEDの東入來信博社長は、ホワイト蒸着では発光効率の向上に限界があると指摘。RGBを塗り分けるのが有機ELパネルとしての最終的な姿だろうとした。同社は有機ELパネルの発光効率やパネル寿命といった課題にも継続的に取り組んでおり、13年のCESに出展した試作機に比べ、16年の段階で白色発光効率は2倍になった。2018年までにはデバイス構造と材料の改良によりさらに15倍にする計画だ。

今後の開発スケジュール

ここまで技術開発を進めながら大型パネルを手がけない理由は、まずリソースの問題だという。われわれは顧客企業へのヒアリングなどを通じて中型パネルの領域に需要が存在するという手応えを得ている。しかし、300人程度の会社で中型と大型を同時に手がけることは難しい。一方で大画面テレビ向けの大型パネル生産に興味を持っている企業があり、中型パネル製造と大型パネルの技術供与を分けてマネタイズすることに決めたと加藤氏は説明する。

中型パネルの展開イメージ

RGB印刷方式は海外パネルメーカーやセットメーカーの関心も高く、既に複数社と実際に話をしているほか、問い合わせも多いという。初期的な段階の話合いは既に始めている。有機ELパネルのラインに自前投資できる会社にわれわれの技術を活用してもらい、将来的には収益の柱の1つにする。パートナーと一緒に市場を拡大し、RGB印刷方式をデファクトスタンダードにしたい加藤氏

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