大江山奇譚〜つなぐ〜翔潤12
まさき弱音吐いて良い?
いいよ、じゅんは何も言わないけど苦しいんでしよ?
苦しいよ、息がうまくできない
痩せ細ってしまったじゅんは俺に助けを求める。ぎゅっと抱き締めれば、
かずもこんなに身体を怠くして、息も吐けない位の咳と吐血を繰り返してたんだね。
十年か発症してからでも、オレの進行のが早いみたい。
こんな厄介者早く死ねって家の人達の気持ちが伝わってくるよ。もうすぐ姉が結婚する。家に結核の弟がいるとわかったら破談になるんだ、きっと
と自嘲的に笑う。
もう、じゅんの魂は透けて見えている。時間がないということだ。
俺がしなきゃ行けないのは、じゅんがかずの死に立ち会って死に水を取ったようにじゅんの死に水を取ってやることだ。
でも、だからってこんな使われてない蔵に閉じ込めなくてもいいじゃないか。
ホコリっぽさはじゅんの胸によくない。せめて、あの灯り取りを開けるくらいはいいでしょ。俺の頸に手を回して、あそこまで連れていってあげる。日の光を浴びないと身体はどんどん弱っていっちゃうよ
まさきは優しいなぁ。いつだったか心が壊れたときもまさきがオレに戻してくれたね。
あのときみたいに乱されてみたいけどそんな体力はもうないや
じゅん
死相が出てるよね。後、数日しか生きられない
じゅん!
わかるんだよ、自分のことだから。見えてるんでしょボロボロに錆びた鎌を担いだじいさん死神だね。そこで手ぐすね引いて待ってる。
ね、手遅れになる前にしょうの記憶を封印して。かずがさとしさんと出会うまで、どんなに側にいたとしても気がつかないようにして
だ、ダメだよ。そんな自己犠牲、意味ないよ
まさき
信じられないほどの力で俺の手首を掴み、
こんなこと、まさきにしか頼めないって
鬼気迫るじゅん。彼の願いを。
でも、記憶を奪うには、
細帯を外し、寝間着をはだける。
反応出来るかな?でも、まさきなら
そっと口唇を会わせようとしたら、
うつるよ!
手を突っ張り避けようとするから細い顎を掴み無理矢理に口の中を開かせ蹂躙していく。
だめ
俺は不死だから。お前たちの行く末を見守るための存在だから
力の弱いじゅんは俺の下に組み敷かれてはあはあと熱い息を吐く。
しょうだと思って俺に身を任せて
お前の記憶は俺が持っていく。でも、せめて最後ぐらいしょうの名前を呼べよ。
でも、じゅんは
まさきまさき
と名前を呼び続けた。
そして俺が打ち付ける楔を受け止め、
ありがとまさき
二度と目を開かなかった。
しょうの存在がじゅんの中から消え去ろうとしている。いや、俺のものがしょうの記憶を包み込んで地に縫い付けた。ふわりと浮かんだじゅんの霊体にはしょうの記憶はない。じゅんが消える
ま、待って!
その言葉は届かない。
次にいつ会えるかわからない俺はじゅんを思っているのに。
なんでしょうなんだよ!
俺にしろよ!
ずっとお前が好きなんだ。
目を開けてよー!
俺はじゅんの亡骸を抱き締めて泣き続けていた。
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